はてなブックマーク - チョロ松も人の子 2006年04月03日

チョロ松も人の子

帰京する私たち家族を襲った昨晩の激しい雨が、たちの悪い夢だったと
錯覚してしまうくらい、からりと晴れ渡った今日の朝。

道路に落ちたサクラの花びらと、時おりその花びらを舞い上げるように
吹き抜ける突風が、昨晩たしかに訪れたものの名残をとどめる。
保育園への初登園という新しい門出に華を添えるには出来すぎの感もある、
幻想的な花吹雪。もし映画かなにかの1シーンであれば、「過剰な演出」
としてコキおろす評論家がいてもおかしくはない。

しかし人間とは不思議なものだ。
やりすぎと思えるくらい演出がかった空間のほうが、
深く感情移入することがある。「むき出しの真実よりも、感動的な嘘」。
学生の時分にはピンとこなかった、くだらない自主制作映画のセリフを
思わず口にしてしまう。

ともあれ、存分に感傷にひたれる日和を用意してくれた
神様のにくい心遣いに感謝する。と同時に、神様の悪戯を呪いもする。
登園初日に、自転車の後輪がパンクしているなんて

サドルを通じて身体の芯にダイレクトに伝わる振動。
かなしいかな、これが現実で、真実だ。


保育園に到着すると、園長先生自らお出迎えしてくれた。
さすが、新年度初日の今日はビシッとスーツを着込んでいる。
こちらも負けじと気を引き締めて、挨拶をする。
「おはようございます。今日からお世話になります。」
園長先生の顔が一瞬曇った。
「それが、実は異動になりまして、今日はお別れをしに来たんです。」
「・・・そっ、それは、保育園の先生もたいへんですねぇ。」
そう答えるのが精一杯。内定後の面接であれだけ事細かに息子の
状況を伝えたのに、と思うと愕然とする。しかし、ここで愚痴っても
仕方がない。園長先生だって一公務員だ。抗えない事情はある。
短い間だったが、お世話になったことには変わりがない。
丁寧にお別れの挨拶を述べた。

1・2歳児のフロアに移動し、指定されたクラスに入ると、
時間が早かったせいもあって、まだ誰もいなかった。
右も左もわからない私の様子を見かねて、若くてさわやかな男性が
登園後のセッティングを教えてくれた。男性の保育士さんである。
別のクラスの担任とのことだったが、保育園の側にも男性がいてくれた
ことに少しほっとする。育児休暇を経験したとはいえ、女性だけの
空間にはいまだ慣れない。

準備を終えて、しばらく園内の様子を眺めていた。
後からやってくる親子が「新入園組」か「在園組」かは、その手際の
良し悪しを見れば瞬時にわかる。「在園組」保護者の準備する
スピードの速いこと。そんな中、スーツで身を固めたパパさんが一人、
布団とシーツを前に格闘していた。「いやぁ、上の子の時の記憶を
頼りにやってるんだけど、けっこう忘れてるなぁ」とひとりごつ。
焦りながらドタバタと準備を進めるその姿は「運動会の借り物競争」を
髣髴とさせ、妙に可笑しい。しかし、楽しんでいる場合ではない。
来週からは、私もその人と同じ立場に立つのだ。

息子を子どもたちが集まっている部屋に預け、振り返らずに部屋を出た。
会社の先輩から、「子どもが保育園に慣れないうちは、去り際が大切」
と聞いていた。お互いのために振り返ってはいけないのだという。
いつまでも様子を見ていたい気持ちを押し殺して、足早に園を後にした。


今日のお迎えは11時。
家に帰って、掃除機をかけ、洗濯機を回し、パンクした自転車を
修理屋さんにみてもらったら、あっという間にその時間がきた。

再び保育園に入って上のフロアにむかうと、階段の前に設置された
「ついたて」にしがみついて男の子が泣いている。背格好からして、
息子と同じ1歳児クラスの新入園組の子だ。よその子であっても、
切ない気分になる。息子はどうしているだろうか。

息子のクラスの「ついたて」の前に立って、中の様子を窺ってみる。
ミニカーを上から走らせて遊ぶおもちゃの周りに男の子たちが
集まっていた。その輪から少し離れたところで、息子はひとり、
ミニカーをつかんで走らせていた。横顔からでは表情は読めない。

名前を呼ぶ。
息子が振り返る。

遠目からみても、目が腫れているのがわかった。
たちまち表情が崩れた。泣き出しそうにも、笑い出しそうにも見えた。
全速力で走ってくると、部屋の前の「ついたて」によじ登ろうとした。
そうして、顔をくしゃくしゃにして、「パパ!」と叫んだ。


担任の先生の話では、息子は園内探検をひととおりすませたところで
ふと我に返り、ひとりきりであることに気がついたらしい。
そして、ちょうど眠気が襲ってきたこともあいまって、ぐずぐずと
泣き出したのだという。1歳の新入園組は全員泣いたというから、
先生方はたいへんだっただろう。

その後、保育園の給食を食べさせ、保育園1日目は無事(?)終了。
給食を完食したうえに、家に帰ってからも私の昼食をねだったところを
みると、給食の量が足りていないようだ。明日からは「大盛り」を
リクエストすることにしよう。


あぁ、息子が早く喜んで保育園に通えるようになってほしい。
おむかえに行くたびにあんな顔をされては、なんだか悪いことを
しているような気分になる。

明日は、1日遅れの入園式。
保育園の門をくぐるとき、息子がどんな反応をみせるか心配である。
妻もお休みをとってくれたのだから、どうか笑顔ですごせますように!

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この記事への評価・フィードバック

posted by みやもと かずよし at 23:13 | Comment(4) | TrackBack(1) | 子どものある生活(雑記) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
Yちゃんの門出に乾杯!
(会社で炭酸水を飲む私・・・)
早く、園内に笑顔で駆け出して行くようになるといいね。
また近いうちに遊びに行かせてくださーい。
Posted by tomomi at 2006年04月04日 10:37
「お父さんブログ研究所」のチッカーです。

去年、娘が保育園に通い始めた頃を思い出しました。毎日、後ろめたい気持ちで一杯でした。でも、子どもは強いもので、慣れるのも早く、今では保育園に行くのが楽しいようです。そう遠くない日に、笑顔で通ってくれると思います。頑張ってください!

ブログで紹介させていただきました。
Posted by チッカー at 2006年04月04日 14:41
一つ前の名前を間違えて書いちゃう記事には,プッと笑わせてもらいましたが,保育園1日目のこの記事は,花吹雪が舞い散る画像をバックに大仰に涙を流して両端から駆け寄り抱き合う父子,BGMには物悲しい演歌,みたいなイメージでなんとも切ないですね…。ううう。
きっとすぐに慣れますよ。慣れてほしい。
かくいうウチも再来週から同じ道をたどります。どきどき。うちの子も泣くかなあ。
Posted by tomboyともこ at 2006年04月04日 18:23
みなさん、コメントありがとうございます。

> tomomi

乾杯アリガトウ!
嫁様が忙しい時期(5〜7月)に入る前に、是非遊びに
きてくださいな。(その間にマッサージに行こうなんて、
ちょっとしか考えてないですよ、ええ。)


> チッカーさん

ブログでのご紹介ありがとうございます。

「いつかは慣れる」。
保育園に子どもを預ける先輩方は口をそろえてそう言って
励ましてくれるのですが、すでにくじけそうです・・・。
こんなに切ないものだとは思いませんでした。
そう遠くない「いつか」が早く訪れてくれるのを心待ちにしています。


> tomboyともこさん

ともこさんのところは再来週からなんですね。
おたがい、早く慣れてほしいものですね。

夜、ひとりで家事をしながら、初日にお迎えにいったときの
息子の姿を思い出して、こっそりうるうるしたりしています。
心細いのをこらえて、ミニカー片手に時間をやり過ごして
いる息子の様子は、しばらく忘れられそうにありません。
Posted by knockout at 2006年04月05日 10:16
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